腸活
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目・鼻の粘膜強化でウイルス侵入を防ごう

【連載第5弾】ウイルス感染と「大腸」

冬になると、風邪やインフルエンザ等のウイルスが猛威をふるいます。
手洗い、うがい、マスク等でウイルスが入ってこないようガードするのはもちろん、昨今では食品微生物や食物繊維などを積極的に摂取することで、腸から免疫機能を高めようとする考え方も広く知られるようになってきました。
もともと皆さんの腸の中では、健康維持に重要な菌が共生していますので、自分の腸内細菌群をいかに良い状態に保つかということがとても大事になってきます。

辻典子先生

監修:辻典子先生

十文字学園女子大学 人間生活学部 食品開発学科 教授 /
日本大学医学部 微生物学分野 客員教授/農学博士

1985年 東京大学農学部農芸化学科卒業
1987年 同大学院修士課程修了、同年 農林水産省畜産試験場研究員
1995年 東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得、同年 米国Yale大学School of Medicine博士研究員
1997年 農林水産省家畜衛生試験場 主任研究員
2001年 農業生物資源研究所 主任研究員
2005年 産業技術総合研究所 年齢軸生命工学研究センター免疫恒常性チーム リーダー
2010年 同 バイオメディカル研究部門主任研究員
2015年 同 上級主任研究員、免疫恒常性研究特別チーム長
2021年より現職

常在微生物や食物など腸内の環境成分に適応した免疫修飾と免疫恒常性の維持のしくみを明らかにすることで、免疫向上及び健康な身体づくりの技術的なサポートに取り組んでいる。

2021年8月現在

粘膜が外敵から身を守る要

手洗いやアルコール等でのウイルス対策をしていても、混雑した場所では空気中に微細なウイルスが浮遊している可能性はあります。そのような時にも鼻、目、口、喉や腸の中の粘膜面では、イムノグロブリンA(IgA抗体)や繊毛運動(細胞表面に密生する細く短い毛が動く)でウイルスを排出するようなはたらきが備わっており、感染のリスクから体を守ってくれています。

腸管から全身の免疫機能を高める

私たちの免疫システムは、先述したように、最初にウイルスや細菌等を体に侵入させないように守る自然免疫(粘膜免疫の関与が強い)と、それらが体内に侵入した際に自然免疫とともに働く獲得免疫(全身性の免疫機能にも関与)があります。
粘膜免疫で関連細胞の数も多いのは腸管です。乳酸菌は小腸で免疫細胞である樹状細胞の活性を高め、感染症予防に欠かせないIgA産生を増強するはたらきがあります。一方で大腸ではビフィズス菌や酪酸菌がそれぞれ「酢酸」、「酪酸」といった「短鎖脂肪酸」を産生します。これらが腸管から吸収されて粘膜免疫に作用し、IgAの産生や機能を強化することもわかっています。

乳酸菌や酪酸菌が粘膜バリアを強くする

分泌型IgA抗体は、様々な粘膜面で感染予防にはたらきます。つまり、乳酸菌や酪酸菌の摂取により腸管免疫を活性化することにより、腸粘膜面だけではなく、口や鼻、目の粘膜面にも分泌型IgAの維持増強など免疫賦活の影響が期待されるため、目などからのウイルス侵入対策としても注目されています。
酪酸菌のだす酪酸などの短鎖脂肪酸は大腸の粘液分泌を促進し、粘膜バリアを強化するはたらきもあります。

食物アレルギーにも腸内環境が関与する

ウイルス感染防御とともに社会で注目されている免疫機能として、アレルギーの予防があります。アレルギーの中でも増え続けているのが食物アレルギーです。アレルギーを持つ赤ちゃんと、持たない赤ちゃん、実はお腹を守ってくれる菌がいるのか、IgA抗体がきちんと作られているのかなどで、差が出てくることもわかってきました。IgA抗体の産生は、アレルギー予防にも大事な働きをしているのではないかと期待されています。

腸内環境を安定化するには

あなたの腸にもともといる菌は、あなたの生活習慣や遺伝的性質と相性が良いからこそ生き残っており、定着し、増殖していると考えられます。食事などから摂取する菌体成分や食物繊維は自然免疫の維持増強を助け、もともと腸内に共生している腸内細菌のはたらきも安定に保ちます。菌は毎日便から出ていってしまいますので、日々の食事から、腸を健康に保つことを意識していると良いでしょう。

量は気にせず、腸の健康を助ける菌体成分や食物繊維を、日々腸に届けることが大切です。 量は気にせず、腸の健康を助ける菌体成分や食物繊維を、日々腸に届けることが大切です。